年末がやってきましたが特に変わらず仕事をしています。そんなに寒くもないし、特に年末感もありません。クリスマスも仕事しながら「クリスマスっぽいものひとつも見なかったなぁ。まぁいいかクリスチャンでもないし（どちらかというと無神論者）」とか言いながらクリスマス用のイラストだけ描きました。
大掃除もスケジュール的に年内にはできないし、いつもと変わらぬ生活をしながら年越しをしそうな予感です。大晦日くらいはお休みにして積みゲームをクリアするのに当てようかなと思ったり。
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では本題です。
イギリスの古典小説をあまり読んでいなかったのでもっと読みたいなぁと手始めにチャールズ・ディケンズの『大いなる遺産』を読んでみました。ヴィクトリア朝時代を代表する作家ですが、あまり触れる機会がなかった。（なんとクリスマス・キャロルさえ内容を知りません）映像作品ならいくつか見ているのですが、さすがに原作を読んでみるべきだろうと思い手に取ったわけでした。これがま～面白かったです！
『大いなる遺産』
両親を亡くし姉に育てられたピップは、姉の夫である鍛冶屋のジョーと3人暮らし。沼地の広がる村で鍛冶屋になるはずだったがある日＜素性を明かさない誰か＞から多額の遺産を譲られることになり、ロンドンで紳士になるべく教育を受けることになる―。
という物語。
読んだのは岩波文庫です。表紙と同じような線画のイラストが中にもいくつか入っています。他の翻訳文を読んだことがないので比較はできないのですが、とても読みやすかった。主人公ピップの一人称で構成されています。（大人になったピップが子供時代～青年期を振り返りながら説明してくれるような文章。妙にかわいらしい）
内容の振り返りはしませんが（とにかく長いので）登場人物が多く、しかもみんないい方にも悪い方にも魅力的で、彼らの行動や会話がとても可愛らしいというか、キャラが立っていてスルスル読めてしまうお話でした。暴力をふるいどこまでもピップを貶めてくる姉の言動や、朴とつで天使のような優しさと悲しみがあるジョーや、ピップが遺産を手にするとわかったとたんあまりにも露骨に態度を変える滑稽な俗物パンブルチュック。自身の結婚式が破綻した瞬間から時を止めて暮らすミス・ハヴィシャムとロンドンの良心ハーバート・ポケットなどなど。
あげていくとキリがないのですが、彼らとの思い出をピップが思い返しているという形をとっているためにひどく苦しいシーンでも読んでるこちらも少し距離を保てるというか、そのあたりも含めてなんだか優しい小説でした。
わたしは天使のようなジョー（途中からジョーのシーンはほぼ泣きっぱなしで読んだ）、ピップの親友になる楽天家で明るいハーバート、弁護士事務所で働く可愛らしい親爺さんと暮らすウェミック、あとこの物語のキーになるミス・ハヴィシャムが好きです。あと彼らの間を行ったり来たりしながらひたすらひとり相撲をとってる感じの主人公ピップも。
小説の中では彼らの生活模様も細かく描かれていて、食卓の具合や馬車での移動の仕方、住居や街中の様子などなど個人的にとても勉強になって楽しかったです。貧しい食卓から近くのお店のとっておきだとか、ワインを飲んだり水の代わりにビールを飲んだり、下手な演劇を観に行ったり（ディケンズの趣味も入ってる気がする笑）、服を仕立てたり。当時の生活を肌身で感じたい派としては（たとえば家に戻って手を洗う習慣があるのかとか、暖炉の柵に足を乗せてもいいのかとか、そういうことも知りたい）キャラクターが自然と動き回りながら暮らしている様子だけでもわくわく出来ました。読んでいて思ったのは、ディケンズ作品のキャラクターたちはきちんとキャラクターらしい動きをするなと。ちょっとした動作や生活の仕方で彼らがどういう人間なのかを伝えようとしてくるのでとても楽しいし、そこに無理がなくてキャラクターたちの理にかなっているので読んでいて気持ちがよかったです。
まー本当に読みやすい小説でした。難しいところもなくて、ハワハワしながらピップのジタバタを見守る感じです。その中で恋愛ありミステリーありアクションありでなかなか盛沢山。
印象に残ってる場面はたくさんありますが、地味なことなのにとても悲しくて考えさせられたのは、ただの鍛冶屋の弟子の子供で満足して暮らしていた幼いピップがミス・ハヴィシャムのお屋敷でエステラに手がざらざらだとか汚いどた靴を履いてるだとかと罵られて
「これまで一度も自分の手を恥ずかしいと思ったことはなかった。だけど、そう言われてみるとぼくは自分の手をひどく無様に感じだした。エステラさんの蔑み方はあまりに激しかったので、とうとう伝染し、見事ぼくにうつってしまったのだ」
そしてこれ以降ピップは大好きだったジョーを恥ずかしく感じるようになり、この感情は長く染みついて最後の方まで付きまとうことになります。
＜他人の目による批評で自分を見る＞というのは現代にももちろんある普遍的な感情ですが、これはやっかいでつまり「他人の目を気にする」ということですが、ここにはまり込むと自己評価を他人に預けてしまうことになり苦しむことになってしまいます。（だいたい他人の評価なんてそれぞれの主観が入るので一定なわけがない。こんな不安定で勝手なものに自己評価を預けるべきではない）
わたしはこの状態が個人的にとても嫌いなので読んでいて大泣きしてしまいました。子供のピップにこれを避けるだけの人生経験もないし、埋められない身分の差も相まってとても辛かったです。誰もが「自分の知っている世界がすべて」なわけですが、そこから出て手痛い制裁を受ける悲しみと言うのか。
「エステラめーー！！」
と思ったのは言うまでもありません。
さて、原作の小説を読み終わったとことで、新しめの映像作品も見てみることにしました。古典小説を映像化し続けてくれるイギリス。ありがとうBBC（英国放送協会）。観たのは、
■2011年ドラマ版『大いなる遺産』
■2020年映画版
個人的にはなるだけ原作に忠実に作ろうとしている映画版の方が好きでした。
ちょっと時間がなくなってきたので映像版の感想はまた次の記事で。
どちらもアマゾンプライムで鑑賞できます。最近いろんな配信サイトにBBC作品が出てきていて「嬉しい…！！ありがたい！！もっと放出してくれ！！！」と日々叫んでいます。
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ハイ、ここからはいつもの宣伝です。
電子マンガや通販、連載作品についてなどなど。
■連載中
『カイニスの金の鳥』
19世紀初頭のイギリスで
小説家を目指して男装する少女の物語
□連載先／WEBマンガサイト
― マトグロッソ（無料・登録ナシ）
□コミックス1～3巻発売中（紙+電子）
― amazon
― 紀伊国屋書店webストア
― honto
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■電子本作品 
『召喚獣士の学校』
ファンタジー漫画
<召喚獣士>が差別される土地に
生まれた主人公が
故郷から逃げて学校に入る
□amazon kindle（unlimited会員の方は読み放題）
『楚漢列伝α METEO』
古代中国で起こった<楚漢戦争>の中に入り戦う
ゲームをプレイする高校生の男女2人のお話
□COMITIAで出している同人誌の電子版
― Kindle
― BOOK☆WALKER
― BookLive!コミック
― BookLive
― 楽天kobo
― Renta!
□紙本通販
― BOOTH足軽稼働中
・4、5巻と1～3巻の再録本
（※自家通販のため海外への
お届けを中断しております。
ご了承ください）
『コイとのろい』
16ページの読み切り作品
真っ暗でしかセックスできない理由とは…？
□amazon kindle（unlimited会員の方は読み放題）
― コイとのろい
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■既刊と続編
『λ（ラムダ）の箱舟』
1920年代のイギリスに暮らす教授の父と
アウトローな息子と
同じ家で暮らす秘書兼家政婦の少女のお話
□コミックス（全1巻）
― 紀伊国屋webストア
― amazon
― 1話無料試し読み
『λの箱舟 Crazy for You』
コミックスの続きを描いた読み切り。
その後のルディとバレンタインは…？
□amazon kindle（unlimited会員の方は読み放題）
― λの箱舟 Crazy for You
『美軍師張良』
古代中国、楚漢戦争で活躍した
軍師・張良の若い頃のお話
ストーリーじたての4コマ漫画、全2巻
□１巻
― amazon書籍
― kindle
□２巻（同人誌）
― 通販/書籍 ※完売いたしました。再販は2020年末予定。（伸びる可能性あります）
― amazon kindle（unlimitedの方は会員読み放題）
